2024.12.18
以前このブログで、『お口ぽかん』が全身の健康や歯ならびに対してどれだけ悪い影響があるかをお伝えしました。
お口ぽかんは、ざっと挙げるだけでも、
①お鼻のフィルタを通さず空気を吸い込むためウイルスや細菌、有害物質を直接身体の中に取り込み、風邪や感染症にかかりやすくなる
②お口が乾燥してむし歯や歯肉炎、歯周病にかかりやすくなり、歯の着色や口臭の原因になる
③お口まわりの筋肉のアンバランスで歯ならびが悪くなる
と、良くないことだらけです。
大切なお子様のために、身体も心もお口も健やかに成長してほしいと、子育てをされている方ならば誰もが願うことでしょう。
でも、どうやって『お口ぽかん』を直して正しい筋機能を身につけていけばよいのでしょうか。
お口(くちびる)を閉じるには、お口周りの筋肉が正しく動くことが必要です。
くちびるを閉じる主な筋肉は『口輪筋』と言います。
口輪筋のトレーニングは生まれたときから(あるいは胎児期から)始まっており、大きな声で泣くのも、授乳するのも、離乳食を口から捉えてもぐもぐごっくんするのも、指吸いもやおしゃぶりも、くちびるや舌を動かして、お顔周りの筋肉を精一杯使って鍛えているのです。
たくさん使うことで筋肉は発達し、正しく鍛えることで正しい筋肉の動きを得られます。
でも、最近の子どもさんを見て思うのは、お顔もお口も小さくて、咬む力やごっくんする力、くちびるを閉じる力や舌を動かす力が弱いということです。
お口を閉じて食べ物を咬んでごっくんすることはマナーでもあり、口を開けてクチャクチャ音を立てて食事するクチャラーになることを防ぐために大切です。
そこで、老若男女問わず、シンプルで取り入れやすい、くちびるや舌の効果的なトレーニングが『あいうべ体操』です。
あいうべ体操とは、ご存知の通り、福岡県でみらいクリニックをご開院されており、口呼吸問題の第一人者である今井一彰先生がご考案された、口輪筋や舌筋を効果的にトレーニングする体操です。
あー、いー、うー、べーの動作を1日30回を目安に継続することで、くちびるを閉じてお鼻で呼吸できるようにお口周りが自然に鍛えられます。
ぜひご家族みんなでやってみてください。
では、すずき歯科が全てのお子様にぜひ使ってほしいと思っているプレオルソとは、何でしょう。
例えば筋トレするとき、自己流で自分の身体だけでトレーニングするよりも、バランスボールやダンベルなどを使ったり、様々なトレーニングマシンを(時にはインストラクターの指導を受けながら)正しく使う方が、身体を効果的に鍛えられることはおわかりであると思います。
それと同様に、お口周りの筋肉を、あいうべ体操と共に効果的にトレーニングできるマウスピース型矯正装置がプレオルソです。
プレオルソは、お子様の成長期を利用して、お口周りの正しい筋機能を効率的に身につけながら歯ならびアーチを拡げて、将来永久歯が萌える場所を作ることを目的とします。
歯は、くちびると頬と舌の筋力のバランスがとれたところにならびます。
この中のどこかの筋肉が弱かったり、力の働く方向が間違ったりすると、筋力のアンバランスが生じて、歯ならびアーチの崩れが起こり、正しい咀嚼や嚥下(もぐもぐごっくん)、鼻呼吸が難しくなる要因となります。
ヒトは10歳〜11歳くらいまでに上あごの成長がほぼ終わります。
この時期までに正しい筋機能を身につけて、あごの成長を妨げる要因を取り除くことで、永久歯のならぶ場所がしっかり作られて、鼻呼吸を獲得することができます。
すると将来、歯ならび矯正をしなくて済むかもしれないし、抜歯せずに矯正できる可能性が高まります。
そして、正しい筋機能を身につけることは、歯ならび矯正の必要の有無に関係なく、お子様が生涯にわたり元気に健康に過ごすための必須項目であると考えています。
むし歯予防には正しいブラッシングを身につけるように、歯ならび矯正予防には正しい筋機能を身につけること、です。
プレオルソの最大の利点は、先に述べたように、正しい筋機能を身につけることができる筋トレ装置であり、歯ならびの場所作りができる装置ということです。
しかしながら、それ以外にもプレオルソにはお子様やご家族にとって、良い点がたくさんあります。
〇みんなと同じものが食べられます
プレオルソは『可撤式』『マウスピース型』矯正装置です。
24時間つけっぱなしのブラケット矯正(ボタンと針金の矯正)装置とは異なり、食事制限がないので、成長期のお子様がしっかり栄養が摂れる上に、ご家族やお友達と同じものを美味しく楽しく食べることができます。
上あごが成長するということは、骨や筋肉や神経がどんどん発達している時期です。
身体が成長するためには莫大なエネルギー=栄養=食事が必要となります。
このような大切な時期に、例えばブラケット矯正でありがちな『装置が壊れるから硬いお肉や繊維の多い野菜は控えましょう』『装置に着色するのでカレーや濃い色のシチューやソースは食べないでね』などの食事制限はナンセンスだと思うのです。
食事は、栄養を摂ると同時に大切なコミュニケーションの場でもあるのだから、装置が入っているために、ひとりだけ別メニューで内容が制限されるなど、悲しいことではないでしょうか。
〇むし歯になりにくい装置です
また、可撤式装置の有利な点は、いつもの食事だけでなく『いつもの歯磨き』ができることにあります。
歯の表面に複雑な形態のボタン(ブラケット)やフックがついて、そこにワイヤーを通してゴムを掛けている、そんな状況でお食事をしたら、歯や装置に汚れがたくさん残ります。
これを普通のブラッシングだけで綺麗にするのは大人でも難しく、ブラッシングに時間がかかりますし、装置の隙間に届くような1本磨きの歯ブラシや特殊形状のブラシを追加使用したりといった手間がたくさん必要です。
そして、努力してブラッシングを頑張ったにもかかわらず、ようやく歯ならび矯正が終わって装置を外したら、装置のついていた歯がことごとくむし歯になっていてむし歯治療が始まるということが、実は少なくはないのです。
歯やお口をきれいにするためにせっかく努力したのに、むし歯で歯を削って被せることになったら本末転倒です。
患者様だけでなく、治療する歯科医師も悲しく悔しく無力感を感じずにいられないのです。
プレオルソは、食事のときは外して、みんなと同じメニューの食事を思いっきり楽しめる上に、きちんとブラッシングできるのでむし歯にもなりにくいという利点があります。
〇使うのはお家だけ
そして、プレオルソの使用はお家時間だけなので、学校に持っていく必要がありません。
発音に関係する授業や楽器演奏や体育の制限がありません。
こちらもいつも通りにみんなと同じことができるので、学校生活におけるストレスが少ないでしょう。
また、ご家族の方としては、学校で装置をなくしたり壊したりといったアクシデントが避けられるのも利点になるでしょう。
プレオルソにも欠点はあります。
まず、当たり前ですが、装置を入れないと効果は発揮されません。
あいうべ体操は素晴らしいトレーニング法ですが、それだけでは永久歯の歯ならびの土台作りまでは難しいと言えます。
装置を正しく継続して使うことが重要で、ここはお子様とそれを見守る方の努力が必要になります。
更に、プレオルソは、歯ならびの土台作りは得意ですが、ひとつひとつの歯の捻じれや傾きをきれいに整えることはできません。
歯ならびそのものを美しく整えるには不向きです。
しかしながら当院は、子どもの矯正の目的は、歯ならびを美しく整えることではなく『正しい筋機能を身につけて将来歯がならぶ土台を作る』ですので、それでいいと考えています。
土台がしっかりできた上で将来必要ならば歯ならびを整えるのがすずき歯科の子どもの矯正の考え方です。
また、プレオルソ使用の前提条件として『お鼻が完全に詰まっていないこと』があります。
鼻炎やお鼻の病気などでお鼻が詰まっている子どもさんの場合は、まず小児科や耳鼻咽喉科の先生にしっかりお鼻の詰まりを治してもらうことが必要です。
お口ぽかんは全身の健康や歯ならびに悪影響しかありません。
当院では、お口ぽかん改善と歯ならびアーチ作りのために、あいうべ体操と共に『プレオルソ』という機能的マウスピース型矯正装置をおすすめしています。
正しい筋機能を身につけることは、歯ならび矯正の必要の有無に関係なく、お子様の生涯の健康において必要不可欠なことであり、一生の宝物になるでしょう。
また、『むし歯予防には正しいブラッシング、歯ならび矯正予防には正しい筋機能の獲得』が当たり前になってほしいと思っています。
すずき歯科は、むし歯も歯周病も歯ならびも『予防』が大切であると考えており、これからも患者様が元気で健康に生きるためのお手伝いを精一杯していきます。
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