医院ブログ

妊娠と歯について

2025.02.23

人の歯っていつごろから作られ始めるか、知っていますか?産まれて初めての乳歯が生えてくるのは個人差はありますが大体生後6〜7か月ごろです。実はお母さんのおなかの中にいるときから、歯のもとになる部分は作られ始めているのです。

妊娠7週目くらいから、胎児の口の中では「乳歯の芽」と呼ばれる「歯胚(しはい)」が作られはじめ、10週目くらいには乳歯がほぼ揃います。そして実は14週目くらいからはもうすでに永久歯までの形成が始まります。

そして妊娠から4〜5カ月が経つと、赤ちゃんの形成中の歯にはすでに石灰化(せっかいか/歯が硬くなること)が始まるといわれているのです。まだ産まれてもいないのに歯がすでに作られているなんてとても不思議ですよね。

※歯の石灰化には次の意味があります。

  • 歯垢が石灰化して歯石になること
  • 乳歯がカルシウム塩を沈着させて硬くなること

妊娠中の食事と歯の成り立ち

歯は、まず「歯胚(しはい)」という歯の卵となる部分から作られ始めます。歯胚は、エナメル器、歯乳頭、歯小嚢の総称で、歯と歯周組織をつくる器官のもとです。

この歯胚が石灰化(硬くなる)して、’歯冠(しかん)’と呼ばれる歯の頭の部分になります。すべての乳歯は、胎生7〜10週に歯胚形成、胎生4〜6か月に石灰化が始まります。つまり、乳歯の形成には、妊娠中に摂取するお母さんの栄養が大きく関わってくることがわかります。

さらに、乳歯だけでなく、永久歯の上下の前歯と少しとんがった形をしている犬歯、6歳臼歯(6歳を目安に1番奥の乳歯よりも更に奥から抜けずに新たに生えてくる永久歯)もお母さんのおなかの中にいるうちから作られ始めています。

歯胚の時期に異常が生じると、癒合歯(2つの歯がくっついた歯)や矮小歯(正常な歯に比べて小さな歯)になることがあります。

また、歯の形成に重要なカルシウムやリンなどの栄養素が不足すると、歯の表面を覆うエナメル質が正常に発達せず、薄くなったり欠けたりするエナメル質形成不全症や象牙質形成不全症などの異常を引き起こす可能性があります。

そのため、歯の形成に必要な栄養素が不足しないように、お母さん自身が栄養バランスの取れた食事を摂取するよう心がけましょう。

まずはカルシウム:

歯の表面の覆われている一番硬いエナメル質を作る栄養素で、歯と骨の形成には欠かせません。カルシウム不足になると歯がもろくなり、その分虫歯になりやすくなってしまいます。牛乳、チーズ、高野豆腐、小魚、キャベツなどに多く含まれています。

次に鉄分:

妊娠中は貧血になりやすくなります。貧血が続くとお腹の赤ちゃんの成長に影響しますので、鉄分は妊娠前より多く接種することを心がけましょう。小松菜、ほうれん草、ひじき、レバー、赤身肉、カツオ、ブリなどに多く含まれます。

そしてタンパク質:

象牙質はエナメル質の内側にあります。歯の全体の形をつくるのに必要不可欠なものです。魚、お肉、納豆や豆腐などの大豆の加工食品、卵などに多く含まれています。

最後にビタミンA・C・D:

エナメル質や象牙質の質を上げる働きがあります。ビタミンAの不足ではエナメル質が、ビタミンCの不足では象牙質のできが不完全となってしまうことがあります。ビタミンDは骨の生成や全身の成長発育に大切なもので、歯の成長期である妊娠期~授乳期~離乳期に欠乏すると、エナメル質形成不全症を引き起こす可能性があるといわれています。しかし、いくら歯に良いからといって過剰に摂取しすぎるのはもちろん良くないです。食事はいろいろな食品を組み合わせて、バランス良く食べるように心がけましょう。

妊娠中の歯の健康について考えてみましょう

妊娠期は虫歯、歯周病のない口腔内を目指しましょう。「妊娠すると歯周病になりやすい」とか「出産すると歯が悪くなる」という話を聞きませんか。妊娠中はトラブルが起こりやすいです。ホルモンの副作用で唾液に粘り気が出てお口の中を洗い流す作用が低下してしまいます。その結果、口腔内の細菌が増えてしまい、更に変化して虫歯や歯肉炎になりやすくなっています。

それだけではなく、つわりのために気分が悪くて歯磨きができない。何かを食べていないと気持ち悪く食事の回数が増えてしまいお口の中の環境を悪化させてしまうといったことも増えます。そのためリスクが高まってしまうのです。

親知らずはなるべく妊娠前に抜きましょう

あなたは自分に親知らずがあるか知っていますか?妊娠前に歯医者を受診した際、親知らずの状態を見てもらいましょう。実際に生えてきていなくても、横向きに埋まっていることもあります。親知らずは一般的に10代後半から20代ごろに生えてき始めます。

知らない間に生えてきてて気づいていない場合もあります。診察やレントゲン写真で痛みはないけど虫歯になっていたり、真っ直ぐ生えずにお掃除がしにくく、そのせいで汚れが溜まり歯肉の炎症を起こし腫れたりする可能性が高い場合は事前に治療(場合によっては抜歯)することが望ましいです。

歯周病は早産、低体重児出産のリスクにも繋がると言われているのを知っていますか

歯周病の怖いところは、歯周病が悪化するとお腹の赤ちゃんにも影響してしまうことです。早産や低体重児(体重2500グラム未満で生まれること)のリスクが高まってしまいます。なぜ歯周病が早産につながるのか疑問ですよね。メカニズムは次のとおりです。

  • 歯周病菌が増えると炎症性サイトカインという細胞間物質が過剰に放出されてしまいます。このサイトカインが血管に入り込み、血中濃度が高まると、出産の合図として陣痛や子宮収縮を起こしてしまうことがあります。
  • また、歯周病の炎症が広がると、プロスタグランジンという物質が作られて子宮の収縮が促されます。プロスタグランジンは陣痛誘発や陣痛促進のために投与されるお薬として使用される物質と同じなのです。
  • さらに、歯周病が早産や低体重児出産につながるリスクは、アルコールや年齢など他の要因と比べて高いと言われているのです。

カリフォルニア大学歯学部の研究になりますが、歯周病に罹っている妊婦では、歯周病に罹っていない妊婦と比べると早産や低体重児出産のリスクが7.5倍多いと報告されています。歯周病と妊娠・出産には深い関係があることが分かります。

安全なお産と赤ちゃんの健康のためにも、歯周病対策や口腔ケアを十分に行っていきましょう。適切な治療ケアで予防によって歯周病は十分予防改善できます。妊娠中は体調不良などで歯磨きの優先順位が下がりがちになってしまいます。

体調不良による日常生活での制約が多くなりお口のケアが不十分になりがちです。無理しない範囲でセルフケアしていきましょう。それぞれの時期のケアポイントをまとめますので参考にしてみてください。

■ケアのポイント

  • ①妊娠初期(0〜15歳)つわりのために歯ブラシを口に入れられない時は無理せず洗口剤などですすぎましょう。洗口剤が苦手な方はうがいだけでも構いません。気分がいい時はヘッドが小さめの歯ブラシを使い、できる範囲でいいのでみがきましょう。
  • ②安定期(16〜27週)つわりがおさまり安定期に入ったら体調をみて歯科検診を受診してみましょう。歯肉の腫れや出血、虫歯による歯痛などの異常がある場合はこの時期に発見しておくことがおすすめです。
  • ③妊娠後期(28〜39週)正しい歯磨きをしっかり行います。強い痛みなどの緊急性がない場合の歯科治療は体調を見て産後に行うことも考えましょう。

つわりなど個人差があることなので一概にはいえないことが多いです。あくまで参考になりますので一番はご自身の体調を優先していただきたく思います。口腔内のトラブルが減るようにお手伝いさせていただければと思っておりますので、気軽に歯科を受診してもらえたらなと思います。

投稿者:医療法人すずき歯科(tokushima-dent.jp)

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