2024.08.06
みなさんはごはんをしっかり噛んで食べていますか?
また、普段のお食事で一口に噛む回数を意識したことはありますか?
子供の頃「よく噛んでゆっくり食べなさい」と言われたことがある方も多いと思います。
現代では、昔と比べるとやわらかい食べ物が多くなったことや、一人暮らしや共働きの家庭、子供の塾通いなどの影響で一人で食事をする機会が増えていたり、新型コロナウイルス感染対策のために黙食を推奨したり、食事にかける時間が短く、よく噛まずに早食いしてしまう方が多くなっています。よく噛まないということは、お口の機能が衰え、糖尿病や高血圧など生活習慣病のリスクを高める可能性も高くなると言われています。
「噛むことは生きること」とも言われるほど、よく噛んで食べることは体にとって大切な役割がたくさんあることをご存知ですか?
【よく噛んで食べることの効果とは】
よく噛むことは、単に食べ物を体に取り入れやすくするためだけでなく、食べ物の消化を助けたり、脳を刺激して発達を促したり、病気の予防をしたり、全身を活性化させるのにとても重要な働きをしています。噛むことの8大効用を示す標語で「ひ・み・こ・の・は・が・いー・ぜ」というキャッチフレーズがあります。弥生時代では1回の食事で噛む回数は約4000回、食事にかける時間は約60分もかかったと言われています。しかし、現代人は1回の食事で噛む回数は約620回、食事にかける時間は約11分と言われ、時代とともに減っています。また、現代人は噛む回数が少なくなったことであごが昔の人に比べて小さくなり、歯並びが悪くなりやすい傾向にあるとも言われています。
よく噛むとどんな良いことがあるのでしょうか?それぞれの効果について紹介していきます。
ひ…肥満予防
よく噛むことで血糖値が緩やかに上がり、脳の満腹中枢が刺激され、食べ物を十分に摂取したという満足感が得られ、食べ過ぎによる肥満を防ぐことができます。
み…味覚の発達
よく噛むことで食べ物が細かくなって表面積が増すので、食材の形やかたさ、素材本来の味を感じることができ、味覚の発達につながります。また、素材本来の味がよく分かるようになったことで薄味でも美味しく食べることができて減塩につながり、生活習慣病の予防が期待できます。
こ…言葉の発音はっきり
よく噛むことであごや口周りの筋肉を動かすため、筋肉が発達してはっきりと正しい発音ができるようになります。また、あごが発達することで歯が正しく生えそろって歯並びが良くなり、噛み合わせも良くなります。また、口周りには表情筋がたくさんあります。よく噛むことで表情筋が鍛えられ、表情も豊かになると言われています。
の…脳の発達
よく噛むことで脳への血流が増加し、脳の働きが活性化され、記憶力や集中力アップにつながります。子供の知育を助けたり、高齢者の認知症予防にも効果が期待できると言われています。
は…歯の病気予防
食べ物を噛むと唾液が分泌され、噛めば噛むほど唾液の量は多くなります。
唾液には、食事の後に歯に付着した食べかすや汚れをある程度洗い流す作用(自浄作用)や歯周病菌やむし歯菌の繁殖を抑える作用(抗菌作用)、食事をして酸性に傾いたお口の中を中和させる作用(pH緩衝作用)、むし歯菌によって溶けかけた歯の表面を修復する作用(再石灰化作用)など様々な効果があり、お口の中を清潔に保つことで、むし歯や歯周病予防につながります。
が…がん予防
唾液に含まれるペルオキシターゼという酵素は、食べ物の発がん性物質の効果を弱める働きがあります。食品中の発がん性を抑えることで、がんの予防につながります。発がん物質は唾液に30秒つけておくと毒消しの効果があると言われています。
い…胃腸快調
よく噛むことで食べ物が細かく砕かれ、唾液と混ざり合いかたまりとなって飲み込みやすくなり、消化酵素がきちんと出て、胃や腸で消化されやすくなります。消化吸収がよくなると、胃腸の働きも活発になります。
ぜ…全力投球
しっかり噛むという行為は運動能力や身体の様々な機能の発達に影響すると言われています。特に歯並びが良いと噛み合わせが良くなり、しっかりと食いしばれるので力を最大限に発揮できるようになります。
【実際にどのくらい噛めばいいのでしょうか?】
厚生労働省では一口30回以上噛むことを目標とした「噛ミング30(カミングサンマル)」運動を提唱しています。食べ物を30回以上よく噛んで食べることにより、身体と心の栄養となり、歯と口の健康づくりや窒息予防につながり、さらに五感で味わうことができるそうです。
ですが、そもそも噛むということは、口の中に入れた食べ物を小さな破片に砕き、それを唾液と混ぜ合わせてやわらかな食べ物のかたまりに加工することで、「安全に飲み込みやすくすること」を目的としています。一口30回というのは、あくまでも健康な人が噛む時の1つの目安です。
その人の健康状態や、何を食べるかによっても適切な回数は異なるでしょう。
ゼリーやプリンなどやわらかい食べ物、蕎麦など喉越しや食感を楽しむ料理もありますし、食事は「美味しくいただくこと」もとても重要です。飲み込みの安全性に問題がなければ、食品によって美味しいと感じる回数で食事を楽しむことも大切だと思います。
一口30回を目標によく噛んで食べるための工夫を紹介します。
①噛みごたえのある食材を取り入れる
やわらかく、軽く噛んだだけで飲み込めてしまう食材では、噛むことを意識しにくくなってしまいます。
・食物繊維の多いもの…根菜類、海藻類、きのこ類、豆類など
・弾力があるもの…肉、えび、いか、たこ、こんにゃくなど
・乾燥したもの…ナッツ類、煮干し、ドライフルーツなど
②調理法を工夫する
野菜の切り方を大きめに切ったり乱切りにすることで、噛む回数は自然に増えます。お肉の種類は薄切り肉やひき肉ではなく、かたまり肉の方が噛む回数が多くなります。りんごやさつまいもなど皮ごと食べられる果物や野菜は皮付きで食べるようにしましょう。そして、薄めの味付けにして、よく噛んで素材本来の味を味わえるようにしましょう。
③ながら食べをしない
家でテレビやスマホを見ながら、仕事中にパソコンを操作しながら食事をしていませんか?
食べることに集中することも噛む回数を増やす方法の一つになります。
④飲み物で流し込まない
食べ物が口の中にある時は、なるべく水やお茶など飲み物を取らないようにしましょう。よく噛まずに飲み物で流し込んでしまうと食べ物が細かくならないうちに胃に送られてしまい、消化にも良くありません。よく噛むと、飲み物がなくても自然に飲み込めるようになります。
⑤正しい姿勢で食べる
正しい姿勢で食べることは噛む力にも影響していると言われています。噛むということは、首、胸、肩、背中にある筋肉を使って下あごを動かすことです。椅子に深く腰をかけ、首と背筋をまっすぐにして座ると体幹が安定するので口周りの筋肉やあごをしっかりと動かすことができます。
また、姿勢が悪いと噛み合わせにも悪影響を及ぼすと言われます。例えば、テレビを見ながら横を向いたまま食事をしていると、顔を向けた方の歯で噛むことが多くなり、左右の噛み合わせのバランスが悪くなる可能性があるので、気をつけましょう。
【まとめ】
よく噛むことは全身の働きを向上させ、健康な身体を維持するのに重要な役割を果たしています。ぜひ一口30回を目安によく噛んで食べる習慣を身につけて、食事を美味しく楽しめるようにしましょう。
そして、よく噛むために必要なのは、当然ですが「健康な歯」です。
むし歯や歯周病で歯を失っても、入れ歯を入れたら良いと思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご自身の健康な歯で噛む力が100%だとすると、入れ歯で噛む力は約30〜40%しかないと言われています。
健康で丈夫な歯を多く残し、いつまでもしっかり噛んで美味しい食事をとっていただくために、日頃から正しい歯磨きの仕方を習慣づけ、歯科医院での定期検診をしていきましょう!
気になることがありましたら、お気軽にスタッフにご相談ください。
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