2025.07.09
インプラントは1本あたり数十万円が相場といわれ、その価格の高さに治療をためらう方が少なくありません。しかし実は、インプラント治療費は所得税法上の医療費控除の対象となりうるため、確定申告で申請すれば支払額の一部を還付金として取り戻せます。
医療費控除は年末調整では対応できないため、自分で確定申告を行う必要がありますが、条件を満たせば年収200〜300万円の方でも数万円規模の税金が戻り、実質負担を抑えられる可能性があります。本記事では、インプラント費用を医療費控除で賢く節約するための計算方法、申請手順、そして注意点までをわかりやすく解説します。
(本記事は2025年6月時点の内容になります。)
目次
医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、課税所得から差し引ける制度です。控除額は次の式で求めます。
控除対象額=〔年間に実際に支払った医療費−保険金などで補てんされる金額〕−〔10万円または総所得金額等の5%のいずれか低い方〕(上限200万円)
インプラント治療費はほとんどの場合で治療目的のため医療費控除の対象になります。根拠条文は所得税法施行令第207条で、「医師又は歯科医師による診療又は治療」は控除可能な医療費に含まれると明記されています。
また、国税庁のタックスアンサーNo.1128『医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例』でも、インプラントや矯正など自由診療であっても病状に応じた治療であれば控除できると示されています。
ただし、下記の点に注意しなければ医療費控除が認められない場合があります。治療計画と見積書を歯科医院でしっかり確認しておくと安心です。
・審美(美容)目的のみの処置は控除対象外
・一般的水準を著しく超える高額オプション部分は認められない場合がある
・領収書等が必須で、確定申告時に医療費控除の明細書へ金額を転記
医療費控除で差し引ける金額は、次の4ステップで求めます。
1.その年(1月1日〜12月31日)に実際に支払った医療費を合算
2.生命保険・高額療養費などで補填された額があれば差し引く
3.①−②から「10万円」または「総所得金額等の5%」のいずれか少ない方をさらに差し引く
4.上限は200万円。算出した控除額に所得税率(5〜45%)と住民税率(原則10%)を掛けた分が、還付・減税額になります
年収200〜300万円の方は総所得が概ね200万円を超えるため、10万円で計算されるケースが一般的です。たとえば年間60万円の医療費を払い、補填が無い場合は60万円−10万円=50万円が控除対象となります。
インプラントは公的保険が効かない自由診療がゆえに費用が高額になりやすく、控除額も大きくなりやすいのがポイントです。
さらに、クレジットカード払いやデンタルローンでも「治療費として立替えた年」の支払い分であれば控除対象になります。ただし、金利・手数料部分は対象外なので注意が必要です。
例:治療費120万円(一括払い)、補填なし
・120万円−10万円=110万円(控除対象額)
・所得税率5%の場合:5万5,000円還付
・住民税減税:110万円×10%=11万円×控除限度→概算1万1,000円減税
合計で約6万6,000円の負担軽減となり、実質治療費は約114万4,000円に抑えられます。
インプラントは「高額だから無理」とあきらめる前に、医療費控除でどれだけ戻るかを計算してみましょう。当院では治療計画と併せて概算還付額のシミュレーションも承っています。お気軽にご相談ください。
・医療費合計60万円-所得200万円超なので控除不可部分10万円
・控除対象額=50万円
・課税所得帯は195万超〜330万円⇒税率10%
・50万円×10%=5万円
・50万円×10%=5万円 → 合計で約10万円の負担軽減。実質治療費は50万円になります。
・2025年に60万円、2026年に60万円を支払った場合、それぞれの年で控除対象額を算出します。
年度 |
支払額 |
控除対象額 |
所得税(10%) |
住民税(10%) |
還付・減税合計 |
---|---|---|---|---|---|
2025 |
60万円 |
50万円 |
5万円 |
5万円 |
10万円 |
2026 |
60万円 |
50万円 |
5万円 |
5万円 |
10万円 |
→2年間で約20万円の節税効果。分割でも「決済した年」の支払額が控除対象になる点がポイントです。
医療費控除は所得税だけでなく住民税にも連動します。控除額の10%前後が翌年度の住民税から差し引かれるため、給与天引き額が減り手取りが増える仕組みです。給与明細の「住民税」欄で確認できます。
・確定申告書(給与所得者はA様式でOK)
・源泉徴収票
・医療費控除の明細書
・医療費通知(健康保険組合発行、条件を満たせば明細書を省略可)
・領収書・レシート(インプラント代、通院交通費など)
申告方法 |
特徴 |
向いている人 |
---|---|---|
e-Tax |
還付が最速・24h提出可 |
PC/スマホ操作に慣れている |
税務署窓口 |
職員に質問できる |
直接相談したい |
郵送 |
自宅で完結 |
e-Tax環境がない |
※どの方法でも2月16日〜3月15日(還付申告は1月〜5年間可)に提出が必要です。
医療費控除をなるべく大きくするためには下記のチェック項目が含まれているかご確認ください。
チェック項目 |
なぜ重要? |
---|---|
家族全員の医療費を合算したか |
同一生計なら合算OKで控除額UP |
通院交通費を記録したか |
公共交通機関分は控除対象 |
支払日ベースで計上したか |
年末跨ぎの分割・ローンは要注意 |
ローン・カード手数料を除外したか |
金利・手数料は医療費にならない |
領収書を5年保管できるか |
税務調査時の証拠に使用 |
Q.年収200万~300万円の場合、医療費控除上限200万円に注意すべきでしょうか?
A.年収200万~300万円前後では控除の上限に到達するケースは少ないと考えられます。複数本まとめて行う高額治療でも上限まで余裕があると思われますがシミュレーションをすることをおすすめします。
Q.領収書を紛失した場合は?
A.領収書の再発行は原則不可となっております。また紛失してしまった場合、認められにくいため、受領後はすぐにスキャンしておくか保管しておくことをおすすめします。
※医療費の領収書を確定申告期限等から5年間ご自宅等で保存する必要があります。
Q.治療が複数年にわたる時の申告タイミングは?
A.治療を受けた日ではなく支払日が基準。年をまたぐ場合は各年に分けて申告するようになります。
年収200〜300万円の方でも、10万〜20万円規模の税負担軽減が見込めるケースが多く、インプラントのハードルは大きく下がります。申告はe-Taxなら自宅で完結し還付も早いことがあります。
当院では、インプラント治療や矯正治療のご相談を承っております。また治療内容だけにとどまらず、治療費の支払い方法、医療費控除やデンタルローンなどの悩みについてもご相談をいただいております。お気軽にご相談ください。
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