歯科コラム

お口の健康とは

2024.08.13

口腔機能の健康を考えたことはありますか?

口腔機能とは「食べる」「話す」「笑う」「呼吸する」などの、生きていくうえで重要な役割を果たしているものです。

特に「食べる」に関しての機能が低下してしまうと、食事できる食物の種類や量が制限されるので、栄養のバランスがとりにくくなり、食事の質が悪くなるため、免疫や代謝といった機能の低下から病気にかかりやすく、治癒しにくくなります。

健康で元気な毎日を過ごすためにもお口の中の健康はとても大切なことです。

ということで、今回は口腔機能の低下についてお話させていただきます。

皆さんは『オーラルフレイル』と言う言葉をご存じですか?

「オーラル」とは、口に関係することや口頭で行われることを指します。

歯医者ではよくオーラルケア(口腔の手入れ、歯ブラシや洗浄液など使って、虫歯や歯周病を予防すること)と言う言葉を聞くと思います。

次に「フレイル」と言う言葉ですが、耳にしたことはありますか?

フレイルとは、「虚弱」「老衰」「脆弱」などを意味します。

また、「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入や支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」とされています。

簡単にフレイルについてお話したところで、本題の「オーラルフレイル」についてお話していきたいと思います。

オーラルフレイルとは、口(食べること)に関するちょっとした衰えを放置したり、適切な対応を行わないままにしたりすることで、口の機能低下、食べる機能の障害、さらには心身の機能低下まで繋がる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念です。

オーラルフレイルの定義として

老化に伴う様々な口腔の状態(歯数・口腔衛生・口腔機能など)の変化に、口腔健康への関心の低下や心身の予防能力低下も重なり、口腔の脆弱性が増加し、食べる機能障害へ陥り、さらにはフレイルに影響を与え、心身の機能低下まで繋がる一連の現象及び過程とされています。

オーラルフレイルの危険度チェック

自分がどのくらいオーラルフレイルの状態に近づいているのか、まずはチェックしてみましょう。次の表で当てはまる回答の点数を合計してください。

質問事項

はい

いいえ

半年前と比べて、堅いものが食べにくくなった

2点

0点

お茶や汁物でむせることがある

2点

0点

義歯を入れている

2点

0点

口の渇きが気になる

1点

0点

半年前と比べて、外出が少なくなった

1点

0点

さきイカ・たくわんくらいの堅さの食べ物をかむことができる

0点

1点

1日に2回以上、歯を磨く

0点

1点

1年に1回以上、歯医者に行く

0点

1点

 

チェック結果

*合計0~2点:オーラルフレイルの危険性は低い

*合計3点:オーラルフレイルの危険性あり

*合計4点以上:オーラルフレイルの危険性が高い

ご自身のオーラルフレイルの危険性はどうでしたか?もし危険性が高いという判定の場合、専門的な対応が必要です。かかりつけの歯医者に相談するなど、早めの対策をとってください。

また、オーラルフレイルはその進行度合いにより4つの段階(第1から4レベル)があり、それぞれの段階への対応があります。

「第1レベル口の健康リテラシーの低下」

歳を重ねることにより個人を取り巻く社会的な環境が変化し、その役割も変化することになります。具体的には自分の役割が、「仕事場」からボランティアなど「地域」での活動を求められること、またその新しい役割を持てないことなどが考えられます。こういったことをきっかけに知らず知らずのうちに自身の健康への興味が薄れていく段階です。つまり、健康に関する知識、情報を効果的に自身に活用する能力(健康リテラシー)が低下する状態になり、さらに口に関する健康リテラシーも低下してしまいます。

「第2レベル口のささいなトラブル」

日常生活における、ささいな口の機能低下(滑舌低下、食べこぼしやわずかのむせなど)に伴う職を取り巻く環境悪化の前触れ段階です。例えば、「最近固いものが食べ難い。歳だから堅いものは避けて柔らかいものにしよう。消化も良いから。」などいった誤った食事選びが習慣化し。さらに老化による体の機能低下も相まって口の機能低下が進む段階です。その機能低下はささいであることから自覚することなく潜在的に進んでしまいます。

「第3レベル口の機能低下」

お口の中の機能の低下が顕在化(噛む力の低下、舌運動の低下)し、サルコペニアや低栄養へ陥る段階です。この状態の対象者として、口腔機能低下症の診断がつく者もいることから、このレベルの対応は歯科診療所で行われることとなります。

「第4レベル食べる機能の障がい」

要介護状態、運動・栄養障害になってしまう段階で、「摂食嚥下機能障害」として診断がつく段階であり、このレベルの対応は専門的な知識を有した医師、歯科医師などが対応します。

オーラルフレイルの予防のために

1.かかりつけ歯医者を持ちましょう!

2.口の“ささいな衰え”に気をつけましょう!

3.バランスのとれた食事をとりましょう!

“ささいな衰え”見逃さず、健康長寿

お口の機能低下により、必要な栄養素が摂取できなくなり、心身の活力が低下した状態「フレイル」につながってしまいます。

ここでフレイルチェックもしてみましょう

フレイルの基準

次の5項目のうち3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します。当てはまる項目がないかご自身でチェックしてみてください。

1.体重減少:意図しない年間4.5㎏または5%以上の体重減少

2.疲れやすい:何をするもの面倒だと感じるのが週に3~4日以上感じる

3.歩行速度の低下

4.握力の低下

5.身体活動量の低下

チェックして当てはまる項目はありましたか?フレイルは体重減少や筋力低下などの身体的な変化だけでなく、気力の低下などの精神的な変化や社会的なものも含まれます。

フレイル予防の3つの柱

1.栄養:食・口腔機能

①食事(たんぱく質、そしてバランス)

②歯科口腔の定期的な管理

2.身体活動:運動・社会活動等

①たっぷり歩こう

②ちょっと頑張って筋トレ

3.社会参加:就労、余暇活動、ボランティア等

①お友達と一緒にご飯を

②前向きに社会参加

3つの柱を底上げして、健康な日々を送りましょう

口腔機能にあわせた食事

①器質的問題(歯が痛い、義歯が合わない)

堅いものやペラペラしたものは調理段階で工夫をしましょう。

例えば、肉の筋を切る、野菜の繊維を断ち切るように切る(小松菜などの葉物野菜では、茎の部分が噛みづらいので歯の部分を使用する)、煮込み料理にする、などがあげられます。

②巧緻性の低下(舌が巧みに動かないなど)

舌の巧緻性が低下すると、口腔内で食べ物がまとまらずに散らばって食べづらくなります。それにより食事に時間がかかるようになり、食事を摂ることに苦痛を覚える場合もあります。そのために、あんかけにする(あんかけチャーハンなど)、マヨネーズで和える、納豆や卵かけご飯にする、などにより、口腔内でバラバラになる食べ物をまとまりやすくします。

③筋力低下(舌圧低下など)

舌圧が低いことは硬いものが食べづらくなることだけでなく、全身の筋力低下も疑われます。硬いものに関しては、器質的問題の場合と同様、軟らかくする工夫が求められます。

通常の食事だけでは十分な栄養摂取が難しい場合は栄養補助食品の活用も検討してみてください。

まとめ

虫歯、歯周病はもちろん、オーラルフレイルにならないように、かかりつけ歯医者をみつけ定期検診を受診してください。

今回は主にオーラルフレイルについてお話しましたが、幼年期〜高齢期までお口の健康を保つためには小さいころからの定期検診が重要です。

人生100年時代と言われています。最後までご自身の歯でおいしいものを食べられるようにお口の健康を守っていきましょう。私たちにそのお手伝いをさせてください。すずき歯科でお待ちしております。

投稿者:医療法人すずき歯科(tokushima-dent.jp)

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