2025.05.21
フッ素は主に虫歯の予防に使われ、歯を強くし骨にもいいと言われています。
またフッ素は子供の虫歯予防だけではなく、大人にも効果があります。今回はフッ素について、効果と注意点についてお話しします。
目次
フッ素は正式にはフッ化物といいます。自然界にある物で、カルシウムと同じようなミネラルの一種でありお茶や飲料水、ワカメなどの海産物、肉や野菜など色々な物に含まれています。
・フッ化ナトリウム
1番使われているフッ素で、ペースト、ジェル、泡タイプがあり安全で虫歯予防の効果があります。
・フッ化ジアミン銀
虫歯になってしまった場所にフッ素と銀の抗菌作用で進行を遅らせる効果があります。
塗布した部分が黒く変色します。
・フッ化第一スズ
あまり使用することは少ないフッ素です。
・エナメル質の強化
継続してフッ素を塗ることにより、歯の結晶を硬く強くする。
・歯の再石灰化
糖を含む飲食をすると口の中が酸性になり歯の表面のエナメル質からカルシウムやリンなどのミネラルが溶け出し、歯の表面が白くなる事を脱灰といい、フッ素は脱灰した所を硬くする再石灰化させる働きがある。・抗菌作用があり、口腔内の虫歯菌であるミュータンス菌の活動を抑制する。
・酸の量を減少させる
・高濃度のフッ素塗布により、長期間の虫歯予防効果が期待できる
日本ではフッ素入り歯磨き粉は1500ppm、
歯科医院で塗る高濃度フッ素は9000ppmまでと定められています。
高濃度のフッ素を大量に摂取した場合には急性中毒をおこす可能性があり、症状として吐き気や嘔吐、腹痛があげられますが日常的な摂取ではそのようなリスクはほぼありません。市販の歯磨き粉やフッ素洗口液は使用法を守ることで安全に使えます。
長期間に高濃度フッ素を取り入れると歯に斑状歯と呼ばれる白い白濁模様が出る場合や骨硬化症の可能性がありますが、通常の歯科製品の使用では、こちらもリスクはほぼありません。年齢に応じて適切な使用をしましょう。
・高濃度フッ素
・歯科医院で塗布する
歯科医院で直接歯に塗るフッ素は高濃度で、濃度は9000ppmです。歯磨き粉に含まれる9倍の濃度なので、虫歯予防効果が高いです。
歯が生え始めた頃(6ヶ月〜1才くらい)から歯科医院で塗布できます。
・低濃度フッ素
・フッ素入り歯磨き粉を使う
約9割の市販の歯磨き粉にはフッ素が入っています。年齢に対する濃度を守りブラッシングしましょう。
ペーストタイプ、ジェルタイプ、泡タイプがあり、ペーストは泡立ちがよく隅々までとどきやすいし、ジェルタイプは口腔内に停滞期しやすく泡立ちはないなど、それぞれに特徴があるので、自分にあったフッ素入り歯磨き粉を選びましょう!
2023年にフッ素入り歯磨き粉の推奨濃度の変更がありました。
以前は5才までの子供にはフッ素濃度500ppmが推奨されていましたが現在では次の様に変更されています。
フッ素濃度1000ppm
量は米粒大くらいを1日2回うがいできない場合は塗布後ふきとる
フッ素濃度1000ppm
量は5mmくらいを1日2回
少量の水で1回ゆすぐ
フッ素濃度1500ppm
りょは2cmくらいを1日2回
少量の水で1回ゆすぐ
オラブリス洗口液
おうちでできる低濃度のフッ素洗口液です。
ブクブクうがいができるようになる約4才くらいから使用できます。低濃度ですが、毎日フッ素洗口を続けることにより、50〜60%の虫歯を予防できると言われています。
作り方はオラブリスの粉末1包と水道水300mlを専用の容器に入れて混ぜるだけでフッ素洗口液がつくれます!
使い方は普段通りの歯磨きをした後、オラブリス洗口液約10mlを口に含み、30秒間ブクブクうがいをして吐き出すだけです。ポイントは口の中が泡だらけになるくらいブクブクすると歯と歯の間までオラブリス液が行き届きます。
フッ素はガラスを腐食させるので、プラスチック製の容器を使いましょう。お水は水道水で作りましょう。ミネラルウォーターはカルシウムイオンがフッ素と結合して不活性化させ、効果が発揮できない事があります。
作った洗口液は1ヶ月で使い切り、残った液は捨てて下さい。保存は必ず冷蔵庫で保管しましょ
う。小さなお子様の手が届かない所に置くようにして下さい。
それではフッ素には高濃度フッ素と低濃度フッ素がありますが、どちらが虫歯予防効果が高いでしょうか?
高濃度フッ素は歯科医院でしか使用できない9000ppmの濃度であり、歯の結晶成分であるヒドロキシアパタイトを酸に溶けにくくします。しかし効果はずっと続くのではなく、歯の表面に限られており効果も少しずつ減少していくので、年に2.3回の塗布を続けましょう。塗布後は少なくとも、30分間は飲食や洗口を控えてフッ素を定着させましょう。
次に低濃度フッ素ですが、歯磨き粉や洗口液に含まれるフッ素で、歯の表面に残ったフッ素が歯が溶けるのを防ぎ、歯を硬くする再石灰化を促進させます。大半のフッ素は唾液や洗口により洗い流されてしまいますが、口腔粘膜に付着して残ったフッ素が効果を継続させてくれます。フッ素洗口は1日1回、フッ素入り歯磨き粉は1日2回使いましょう。
つまり結論は高濃度フッ素は歯を強くし、低濃度フッ素は虫歯になりかかった所を再石灰化させるので、両方することが虫歯予防に相乗効果が高まりますので併用がおすすめです。
イエテボリ法と言う言葉をご存知でしょうか?予防歯科の先進国であるスウェーデンのイエテボリ大学で考案された虫歯予防効果が高い磨き方で、通常の歯磨きでは予防できない歯と歯の間の虫歯を26%も予防できたという報告もあります。ではどのような磨き方をするのかご紹介します。
(2×2×2×2)とは
⚫︎1日2回歯を磨く
⚫︎2cmのフッ素入り歯磨き粉を使用する
⚫︎2分間歯を磨く
⚫︎2時間の飲食を控える
と言う意味です。
まず1日2回フッ素入り歯磨き粉を使いますがポイントは、いきなり磨き始めるのではなく、まず歯全体に歯磨き粉を広げてから磨いていきます。歯ブラシは45°くらいの角度で当たるように磨き、小さく歯ブラシを動かします。磨けたら、口の中の歯磨き粉は吐き出さず、ペットボトルのキャップ1杯の水で30秒間ブクブクうがいをして吐き出します。
何回もゆすぐと効果がなくなるので、少量の水で1回だけゆすぐようにしましょう。ブラッシング後は少なくとも2時間は飲食しないようにして、食後や寝る前に行う事でさらに虫歯予防効果が高くなります。
シーラントとは子供によく行われる処置で虫歯リスクの高い奥歯の溝をレジン樹脂で埋める方法です。
乳歯は、噛み合わせの溝が深く形も複雑で歯ブラシを当てても届きにくく、虫歯になりやすい場所で、特に6才頃に生えてくる第一大臼歯は、噛む中心になる場所であり、生えたばかりの永久歯は歯質が弱く、溝が深いので特に虫歯リスクが高くなります。
当院で使っているシーラントはフッ素徐放性と言い、少しずつフッ素を放出し、歯を強くさせる効果があります。シーラントは歯を削って埋めるのではなく、深い溝を埋めるだけの処置なのでかけたり取れたりする事があるため、定期的なチェックが必要です。
今回は虫歯予防に効果が高いフッ素についてご紹介させて頂きましたが、フッ素やフッ素洗口
液、歯磨き粉ですべての虫歯が予防できるのではありません。短時間の歯磨きは、歯の表面へのフッ素による化学変化が促されませんし、ダラダラ食べる食生活があれば、虫歯リスクが高まります。少なくとも3分間は歯ブラシする時間をかけ、少量の水で1回ゆすぐようにしましょう。フロスを使う事で、歯ブラシが届かない歯と歯の間の汚れを落とす事も、とても効果があります。
しっかり念入りに磨いたつもりでもセルフケアには限界があり、残った細菌が虫歯や歯周病の原因になるので、歯科医院でプロによるオーラルケアを受けましょう。
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