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お口の中の金属でアレルギーが起こる?

2025.04.25

金属アレルギーと聞くと、一般的には時計や指輪、ネックレスなどの金属が肌に直接触れることで、痒みやかぶれ、発疹など皮膚に炎症が現れることを想像すると思います。

しかし、金属アレルギーは直接肌に触れること以外に実は歯の治療で使用されたお口の中の金属が原因となってアレルギー症状を引き起こすことがあるのです。

今回のブログではお口の中の金属とアレルギーの関係性についてご紹介します。

1.金属アレルギーとは

金属アレルギーには金属が直接触れたところにアレルギーが起こる「局所性金属アレルギー」と、原因とは離れたところにアレルギーが起こる「全身性金属アレルギー」の2種類があります。

また、典型的な遅延アレルギーであり原因物質に触れてから症状が出るまでに時間差のあるアレルギーです。花粉症が突然発症するのと同じように、金属アレルギーもある日突然発症すると言われています。

歯の詰め物やクラウン(被せ物)、義歯など歯の治療に使用された金属は、唾液によってイオン化され体の中に取り込まれます。体の中に取り込まれた物質はタンパク質と結合し、アレルギーの原因となる「アレルゲン」という物質に変化します。ヒトの体にとってこのアレルゲンは異物とみなされ、体の外へ出そうとして過剰反応が起きてしまうことがあります。これがいわゆる「歯科金属アレルギー」です。このアレルギーは、口腔内の環境に関連しており、皮膚科での治療だけでは改善が難しいと言われます。

症状が出る前に歯の治療を受けたことが原因と疑う場合もありますが、そうでない場合でも、少しずつ金属イオンが体の中に蓄積され、突然金属アレルギーの症状が現れる可能性があります。実際に数十年前に行った歯の治療に使用された金属が原因で症状が発生するというケースも報告されているそうです。

2.お口の中の金属によるアレルギーの症状とは

お口の中の金属によるアレルギー症状は、歯の治療によって使用される金属材料に対する免疫反応によって引き起こされます。特に、歯の詰め物やクラウン、ブリッジ、義歯などに使用される金属合金(例えば金、銀、ニッケル、クロムなど)にアレルギー反応を示すことがあります。お口の中の金属によるアレルギーの症状には以下のものが挙げられます。

①金属の詰め物やクラウンや義歯の周りの歯茎が腫れる
②口内炎がよくできる
③舌がピリピリと痛い
④変な味を感じるなど味覚異常が現れる
⑤全身にアトピー性皮膚炎のような症状が出る
⑥手のひらや足の裏に多数の水ぶくれができる掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
⑦頭痛や肩こり、めまいといった原因不明の体調不良を引き起こす場合もある

3.アレルギー反応を示す可能性があるお口の中の金属について

では実際に歯の治療で使われる素材の中でアレルギー反応を示す可能性のある金属とその成分についてご紹介します。

アマルガム

アマルガムとは、金属の合金で、主に水銀と他の金属(例えば銀、スズ、銅など)からなるものを指します。特に歯科用アマルガムは、歯の詰め物や修復材として使用されることが多く、硬化すると非常に丈夫で長持ちするために広く使われていました。しかし水銀の含有量が多いため、その安全性に関する懸念が高まりました。日本を含む多くの国では、水銀の取り扱いに関する規制が厳しくなり、現在ではほとんど使用されていません。水銀は体の中に取り込まれやすい上に分解されにくいため、そのまま体の中に蓄積されてしまいます。その結果、口腔内や全身にアレルギー症状が起こることがあります。

金銀パラジウム合金

歯の治療に使われる代表的な金属で、金、銀、パラジウムを主成分として作られた合金のことです。金と銀の特性を持ちながら、パラジウムが加わることで合金に強度や耐腐食性、酸化に対する耐性が増します。主に保険診療において取り扱われており、歯の詰め物やクラウン、ブリッジに使われています。しかし、パラジウムは金や銀よりもアレルギー反応を示す可能性が高く、アレルギー症状の原因となることがあると言われます。

銀合金

銀合金は主に銀を基にして他の金属と合金された材料です。主に歯の詰め物やクラウンなどに使用されます。銀そのものはアレルギーを引き起こしにくい金属ですが、銀合金には他の金属(例えば銅、ニッケル、パラジウム、亜鉛など)が含まれていることがあり、これらの成分に対するアレルギー反応がある場合、口腔内や全身に症状が現れることがあります。

このように歯の治療には様々な金属が使われています。保険診療の詰め物やクラウン以外にも義歯のクラスプ(バネ)などで使われます。また自費診療にも金属が使われることもあります。自費診療の義歯の場合、床(しょう)の部分がプラスチックでなく金属が使われますが、コバルトクロム合金やチタン合金、パラジウム合金、金合金などが使われます。

歯並び矯正の装置においてワイヤーおよびブラケット部分には、ステンレススチールやニッケルチタン、チタンなどの金属が使われています。

また、歯を失った方のインプラント治療に使われる金属は主にチタンです。チタンは人体に対して非常に優れた生体親和性を持ち、拒絶反応が起きにくく、アレルギー症状が出るリスクは非常に低いと言われています。しかしまれにチタンアレルギーがある人もいますので、アレルギーが疑われる場合には必ず専門の医師に相談し、アレルギー検査を受けることが推奨されます。

4.金属アレルギーの検査方法とは?

金属アレルギーの検査方法として一般的に行われるのは、パッチテストです。アレルギーを疑う金属成分を含む小さなパッチを皮膚に貼り付け、一定期間(通常48時間から72時間)その反応を観察する方法です。

①パッチの貼付

皮膚(通常は背中)に小さなパッチを貼り、アレルギーを引き起こす可能性がある金属(例えばニッケル、コバルト、クロムなど)を含んだ物質が含まれるテスト用パッチを使用します。

②待機期間

パッチはそのまま数日間貼り付けた状態で、定期的に皮膚の状態を確認します。

③反応の確認

数日後、皮膚の状態に赤みや腫れ、かゆみ、発疹などの反応が現れた場合、金属アレルギーの可能性があると診断されます。

この検査は皮膚科やアレルギー専門の医師によって行われますので、気になる症状がある方やこれから歯の治療を受ける上で心配な方は、皮膚科やアレルギー専門の医師に相談されることをお勧めします。

5.歯の治療における金属アレルギーの予防対策と対処法

金属アレルギーを予防するためには、アレルギー反応を起こしにくい素材を選び、治療することが重要です。すずき歯科では自費診療はもちろん、保険適応内の白い詰め物・クラウン(CAD/CAM)も対応可能です。ただし、奥歯は条件によって保険適応外の場合がございますので、詳しくは歯科医師にご相談下さい。

また、既に金属アレルギーが発症している、診断を受けている場合は、歯科医院で金属の詰め物やクラウンを除去し、非金属のものに交換する治療を受けることができます。自費診療でセラミック治療を選ぶのも選択肢の一つです。セラミックは表面が滑らかで汚れが付きにくい素材で歯との結合性も高いため、すき間が生じにくいです。その上、食べかすなどが付きにくく、虫歯になりにくい素材とも言えます。また経年変化がほとんど起きない、治療時の見た目を維持できる、すき間が生じにくいので治療後長持ちしやすいなどメリットもたくさんあります。

6.まとめ

お口の中の金属が原因で起こるアレルギー症状は、今は症状がなくても花粉症と同様である日突然症状が起こる場合があります。しかし、金属アレルギーの予防と対処法を理解し、対策を行うことで、金属アレルギーに対するリスクを軽減することができると言えます。ご自身のアレルギー状況を正確に把握し、歯科医師と相談をしながら最適な治療方法を選択しましょう。すずき歯科では自費診療、保険診療の素材の特徴などしっかりと説明させていただき、患者様と相談、合意を得た上で治療を進めていきますのでご安心ください。気になる点、ご不明な点があればお気軽にご相談ください。スタッフ一同心よりお待ちしております。

投稿者:医療法人すずき歯科(tokushima-dent.jp)

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